チェロを運ぶ。
■ 何時ぞやの週末、八ツ山のホテルに出かけた。
その側で仕事をしているチェロ弾きの知人を送るためである。
約束はしたのだけれど、その場になると躯がだるく、ずるずると車を出してゆく。
■ 近くだけれど、そのホテルには歯痛ではなくて入ったことがない。
廻る処、エントランスの外れに停め、車の中を片付ける。
ドア・ボーイが窓を叩き、
「お泊まりですか」
と聞く。
■「いや、チェロを運ぶんだ」
「でしたら、この後十五分で着替えが終わりますよ。よかったら中に入って待っていますか」
と言う。
知人がチェロを抱え、階段を昇ってきた。
「着替えは十五分なのか」
「え、なんで知ってるの」
高速に乗り、それから浦和の外れにまでゆく。